地方での起業が年々増加しています。最近ではリモートワークにより、都市部に縛られず、自分の好きな場所でビジネスを展開することが容易になりました。今までは、「高い成長率を求めるのであれば都市部での起業一択」といった風潮があったものの、近年においては地方でも優秀なスタートアップ企業が続々と生まれているため、その見方も少しずつ変化しています。
さて、本記事では地方で起業するメリット・デメリットや、成功している地方発スタートアップ企業について詳しく解説していきます。本記事の筆者自身も、地方発のスタートアップ経営者のため、実際に感じたメリット・デメリットも併せて解説していきます。
今までは、「地方ではヒト・モノ・カネ・情報が集まりにくい」といった声も大きかったけど、テクノロジーの進化により、地方にいても東京の企業と戦える時代になったと感じるよ。本記事では僕の実体験も含めながら、詳しく解説していきます。
地方起業が増加している理由とは
地方起業とは、都市部以外の地域で新たに事業を立ち上げることを指しますが、リモートワークの普及などにより、地方で起業する人が増加しています。
地方での起業が増加している理由とは
近年、地方での起業が増加している背景にはいくつかの重要な理由があります。まず、都市部に比べて生活費やオフィス賃料が低いため、初期コストを抑えながら事業をスタートできる点が挙げられます。また、地域特有の資源や文化を活かしたビジネスが展開しやすいことも大きな魅力です。地方自治体や地元企業からの支援も手厚く、補助金や助成金を利用して事業を拡大するチャンスが増えています。さらに、都市部と比べて競争が少ないため、ニッチな市場をターゲットにした独自のビジネスモデルが成功しやすい環境が整っています。このような理由から、地方での起業が増加しています。
見方を変えれば、都市部に比べて、地方にはライバルが少ないといえるね。単に「地方起業だから不利」と考えるのではなく、地方だからこその強みを考えることが重要だね。
リモートワークの影響は非常に大きい
リモートワークの普及は、地方での起業にとって大きな追い風となっています。従来、都市部に集中していたビジネスの中心が、インターネットを活用することでどこからでも業務を遂行できるようになったため、地方在住でも高度なビジネスを展開できるようになりました。これにより、地理的な制約が緩和され、地方に住みながら都市部の市場をターゲットにしたり、グローバルにビジネスを展開することが可能になっています。また、リモートワークによる柔軟な働き方が可能になったことで、ワークライフバランスの向上や家族との時間を大切にすることができるようになり、地方移住を選択する起業家が増えています。このように、リモートワークは地方での起業に新たな可能性をもたらしています。
地方にいる人は分かると思うけど、「就職したい会社が都市部にしかなかったから」「投資家が東京にいるから」といった理由で地方を離れる人や、地方を選択しない人は結構いたと思う。でも、今はリモートワークという選択肢が出てきたことにより、デメリットも大分薄れた気がするよ。
地方で起業するメリットは7つ!
地方起業にはたくさんのメリットがあります。よく「都市部に比べて地方は起業が難しい」と言われがちですが、意外と都市部にはないメリットもあったりします。それでは解説していきます。
メリット1:都市部よりコストを低く抑えられる
地方での起業は、都市部に比べて生活費やオフィス賃料が格段に低いため、初期コストを大幅に削減することができます。賃料だけでなく、日常の生活費や通勤費も抑えられるため、全体的な経費を低く抑えることが可能です。これにより、資金の多くを事業の成長に投資することができ、早期の利益確保が見込めます。また、都市部に比べて最低賃金も低いため、比較的人件費を抑えることが可能です。
これは僕の会社の場合だけど、確かに地方は都市部に比べて最低賃金は低いのだけど、あえて都市部と同じ給与水準にすることで、周りの企業と比べても、優秀な人からの応募が多いと感じているよ。
メリット2:好きな環境で仕事ができる
地方起業には、都市部では味わえないゆったりとした生活が魅力があります。精神的なストレスを軽減し、クリエイティブな発想を促進する効果があります。
完全に個人的な話になって恐縮だけど、僕はあまり都会の雰囲気が肌に合わなかったんだよね。その点、地方の落ち着いた雰囲気で、自分がしたい仕事ができるというのは大きな魅力と感じたんだよね。
メリット3:「地方ならでは」のニーズに対応できる
地方には都市部とは異なる独自の市場ニーズが存在します。地域特有の文化や習慣、ニッチな市場をターゲットにしたビジネスモデルが成功しやすい環境が整っています。このような市場ニーズに対応することで、他社との差別化を図りやすく、競争優位性を確立することができます。
例えば・・・北海道や東北地方では冬になると「除雪」が必要になるけど、その課題を解決する地元企業も存在するよ。都市部では存在しない課題だけど、地域には確かに存在する課題だよね。ここがビジネスチャンスになったりする。
メリット4:地方発の企業のみを対象とした補助金や支援サポートがある
地方自治体は、地域経済の活性化を目的に、地方発の企業に対してさまざまな補助金や支援サポートを提供しています。例えば、補助金には、起業支援金や設備投資補助金、販路拡大支援金など、多岐にわたる種類があります。また、地方自治体の中には、地元の企業や団体と連携をサポートする取り組みもあります。地域連携によって、販路拡大や共同プロジェクトの実施など、さまざまなメリットが得ることが期待できます。
近年では地方発のスタートアップ企業の支援が手厚くなっていることもあり、いろいろな金銭的サポートが受けられるよ。
メリット5:Uターンでの人材確保が望める
Uターン就職とは、都市部で働いていた人が地方に戻って就職することですが、Uターンで地元に戻ってくる方の中には「地元は好きだけど、都市部にしか魅力的な仕事がなかったから、やむを得ず都市部に行った」という方は少なからずいます。そのようなUターン志望者を採用することで、地方企業は高度なスキルや経験を持った人材を確保でき、ビジネスの成長に大きく貢献することができます。
さらに、Uターン就職は地域社会に多くのメリットをもたらします。地元に戻ってくる人々は、地域の伝統や文化をよく理解しており、地域コミュニティへの適応も早いです。これにより、地域との連携がスムーズに進み、ビジネス活動が地域に根ざしやすくなります。また、多くの地方自治体や企業は、Uターン就職を促進するためのさまざまな支援策を提供しています。例えば、移住支援金や就職支援プログラムなどがありますが、これらはまさに地方ならではのメリットと言うことができます。
Uターンをする人には様々な理由があるけど、「地元に戻りたい」という人を向かい入れられる企業というのは存在意義が大きいと感じるよ。
メリット6:地域人材の雇用により、地域に貢献することができる
地域人材の雇用は、地元経済の活性化に大きく貢献します。また、地元で働く人が増えることで、地域内での消費が増え、地元の商店やサービス業の売上向上につながります。さらに、雇用の増加は、地域の若者が地元にとどまりやすくなる要因となり、人口流出の抑制にもつながります。結果的に地域に貢献することができ、企業の存在価値を高めることにつながります。
都市部への人口流出は、必ずしも悪いとは思わないけど、せめて「本当は地元で働きたかったけど、都市部に行かざるを得ない」という人は地域に残ってもらいたいなと、個人的に思っているよ。
メリット7:目立つからメディアに取り上げられやすい
地方での起業は、都市部と比べて競争が少ないため、注目されやすいというメリットがあります。地域独自の取り組みやアイデアはメディアの関心を引きやすく、広く報道されることでビジネスの知名度を一気に高めることができます。また、地域メディアで取り上げられた情報は、全国メディアに波及することもあります。地方でのユニークなビジネスモデルや成功事例は、地方創生や地方経済の活性化の一環として全国的なニュースになることが多く、その結果、さらに広範な認知度向上が期待できます。
僕自身、これをとても実感するのだけど、たった20人規模のスタートアップが会社設立して2年以内に日本経済新聞の紙面に載った経験があるよ。これもまた、地方発の企業が注目されていると感じる出来事だった。
地方で起業するデメリットは5つ!
デメリット1:都市部に比べて市場規模が小さい
地方での起業において、最も大きな課題の一つが市場規模の小ささです。都市部に比べて人口が少ないため、顧客基盤が限られてしまいます。これにより、売上の拡大が難しくなる可能性があります。特に、B2Cビジネスの場合、地元だけでなく広域の市場をターゲットにする工夫が必要です。
もしエリアに依存するビジネスモデルの場合、この市場規模問題は無視できないね。ただ、戦略によっては、あえて小さいエリアからスタートし、そのエリアの市場シェアをある程度取った上で、別のエリアに進出する、といった方法もあるから、必ずしも悪いことではないよ。
デメリット2:人材の確保が難しい
地方では、優秀な人材の確保が難しいことがあります。都市部に比べて労働市場が小さいため、特定のスキルを持つ人材を見つけるのが困難です。また、若者が都市部に流出する傾向があるため、若年層の人材確保も課題となります。このため、リモートワークの導入やUターン就職の促進などが求められます。
デメリット3:都市部に比べて、繋がりによる情報収集が難しい
地方での起業は、都市部と比べてビジネスネットワークの構築が難しいという問題があります。ビジネスパートナーや顧客との距離が遠いため、直接的なコミュニケーションが取りにくくなります。これにより、ビジネスのスピードや効率が低下することがあります。オンラインツールを活用し、積極的にネットワークを広げる努力が必要です。
デメリット4:顧客獲得が難しい
地方での起業では、顧客獲得も大きな課題となります。市場規模の小ささに加え、地元の人々に新しい商品やサービスを浸透させるには時間がかかることがあります。効果的なマーケティング戦略を立て、地元メディアを活用したPR活動を行うことが重要です。また、地域の特性を活かした独自のマーケティング手法を考える必要があります。
デメリット5:物流や交通に課題がある
地方での起業は、物流や交通の問題も無視できません。都市部に比べて交通インフラが整っていないため、商品の配送や移動に時間とコストがかかることがあります。特に、物理的な商品を扱うビジネスでは、この問題が顕著です。物流パートナーとの連携や効率的な配送システムの構築が必要となります。
地方発のスタートアップ企業3選!
1. 株式会社あるやうむ(北海道札幌市)
札幌発ITスタートアップが革新を起こす
株式会社あるやうむは、札幌を拠点とするITスタートアップで、ふるさと納税とNFT(非代替性トークン)を組み合わせた革新的なサービスを提供しています。
主なサービス
- ふるさと納税 × NFT
- 地域おこし協力隊DAO(分散型自律組織)
資金調達の成功
2024年5月、プレシリーズAエクステンションラウンドで1.17億円の資金調達に成功しました。これは札幌のITスタートアップとして初めての1億円超の調達となります。
今後の展望
あるやうむは、公共事業とNFT・DAOの融合を通じて、地域のデジタル社会の構築を牽引することを目指しています。ふるさと納税にクリエイターの創造力を組み合わせ、地域資源の新たな価値創出にも取り組んでいます。
2. 株式会社アグリノート(新潟県新潟市)
農業を変えるICTソリューション
アグリノートは、新潟市に本社を置く農業テック企業です。ICTを活用した農業支援システムの開発・提供を行っています。
主なサービス
- クラウド型農業生産管理システム「アグリノート」
- AI活用の病害虫診断サービス
資金調達の成功
2022年のシリーズBラウンドで約7億円の資金調達を実施しました。
今後の展望
同社は、AIやIoT技術をさらに活用し、農業の生産性向上と持続可能性の両立を目指しています。また、海外展開も積極的に進め、グローバルな食糧問題の解決に貢献することを目標としています。
3. 株式会社ユーグレナ(石川県能登町)
微細藻類が拓く新たなビジネスの可能性
ユーグレナは、石川県能登町に研究開発拠点を置くバイオテクノロジー企業です。微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の大量培養技術を核に、食品、化粧品、バイオ燃料など幅広い分野で事業を展開しています。
主な事業
- ユーグレナを活用した機能性食品の開発・販売
- バイオジェット燃料の研究開発
- 化粧品原料の製造・販売
資金調達の成功
東証マザーズ(現在のグロース市場)に上場する前の2008年から2011年にかけて、複数のVCから総額約20億円の資金調達を行いました。
今後の展望
同社は、ユーグレナの可能性をさらに追求し、食糧問題、環境問題、エネルギー問題など、地球規模の課題解決に貢献することを目指しています。特に、バイオ燃料の実用化に向けた取り組みを加速させる予定です。
まとめ
地方起業の魅力は、地域資源を活かした独自のビジネスモデルや手厚い支援制度など、多岐にわたります。リモートワークの普及により、地方からでも都市部や海外市場をターゲットにしたビジネス展開が可能となりました。地方発のスタートアップ企業が次々と成功を収めている今、地方での起業は大きな可能性を秘めています。ぜひこの機会に地方での起業を検討してみてください。